あなたも株のプロになれる

成功した男の驚くべき売買記録

媒体:単行本(ソフトカバー)

著者:立花 義正

出版:同友館

分野:投資、文学/哲学

星数:★★★★★★

一言:著者の立花義正さんは、プロの投資家になるために多くの苦労を積み重ねてこられました。本書はその中で会得した技法や投資の心構えなどを、読者のために余すことなく紹介しています。いろんな方にお勧めです。

本の感想:

立花義正さんは、プロの投資家になるために多くの苦労を積み重ねてこられました。たくさんの失敗の過程で会得された投資技術も参考になりますが、私が主に参考になったのは彼の生き方です。投資を失敗したらもうどうしようもない程の背水の陣から見事に復活されています。

投資家を志している方であれば、できるだけ早く読んで欲しい良書だと思います。私は今は投資をやっていませんが、プロの投資家を目指していた当時に本書を読んだ評価は6つ星です。

私の投資手法は要約としてこちらの「相場のチャートから見えてくる人の感情の流れとお金に関する考察」の最初の方に書いてあります。本書を読めば、立花さんの投資手法にも影響されたことが分かると思います。

ここで語られている技術の習得などの基本的な考え方の大切さは、別に投資に限った話ではありません。本書を理解して実践することができれば、他の分野でもちゃんと技術を身に付ける土台が出来上がっていることでしょう。

ちなみに、私の投資手法の7割は本書とその他に、板垣浩著の「自立のためにプロが教える株式投資」と林輝太郎著の「ツナギ売買の実践」の計3冊で成り立っています。実際に読んだ投資関連の書籍は全て含めると30冊くらいにはなると思いますが、私のサイトではその中で特に良かったと思う本だけを紹介しようと思います。

残りの3割は他の書籍で書かれていたアイデアを参考にしたり、リスクマネージメントの手法などを自分独自で確立しました。

見開き部分から引用させていただきます。

「多くの投資家は当てようという努力に相当なエネルギーを消費している。その膨大なエネルギーを技術の習得に向けたならば、短期間に見違えるほどの進歩を示すに違いない」

私にとって、本書と「自立のためにプロが教える株式投資」と「ツナギ売買の実践」は、相場技術と相場感覚を身に付けて“相場技師”になるための入門書という位置付けです。ちなみに”相場技師”とは私の造語です。投資を行っていた当時は自らのことを、相場師ではなく相場技師と呼んでいました。

物語形式でお話が進みますので、読みやすいと思います。最初の方では著者立花義正さんの半生が描かれています。この部分はなぜ立花さんが相場のプロになろうと思ったかの土台となる部分が書かれていますので、読み飛ばさないで読んだ方が良いと思います。

話が後半に進むにつれて、具体的な投資手法の説明に入っていきます。ただし、投資手法の説明に関しては本書だけでは不十分だと思う所もありますし、後半部分では幾分内容が分かりづらい所も出てくるかもしれません。そのような場合は、板垣さんや林さんなどの他の書籍も併せて読んでください。このお三方は投資に対する根本のお考えは一緒ですので、読んでも違和感は感じないと思います。

それでは本文の感想に入ります。

第一部:研究と試行錯誤

著者が投資のことを全く知らなかった素人時代のお話から始まります。一度破産をしましたが、損を取り返そうと真面目に勉強を始めます。投資に関して見るもの聞くものすべてを吸収しようとしました。立花さんは当時相当の努力をしていたはずですが、結果は負けの連続です。ついには相場の先生に弟子入りしますが、その先生には最終的に騙されることになります。

散々な目にあった著者ですが、大変な経験を通じて努力は自分自身で行う必要があるという事に気づきます。これは個人主義や自給自足の考えと通じるものがあり、私の根本思想は投資を勉強していた時代から少しづつ培われていたということを感じます。

勉強の方法が間違っていれば、いくら努力しても実力が付かないということを著者は言いたいのだと思います。

特に現代はあらゆる情報が溢れています。見たくないのに、聞きたくないのに、押し付けがましい情報もたくさんあります。現代人は多かれ少なかれ、それらの多くの情報を知らず知らずの内にフィルタリング(取捨選択)しているはずです。

以前の私だったら、自分の興味のある情報だけを選別して吸収していました。本当に自分にとって必要な情報も私の目や耳には入っていたはずですが、知らず知らずの内に捨てていたと思います。ただし私のケースは、勉強の方法も間違っていましたが、その前段階たる勉強する動機から間違っていましたから、ちょっと著者とは事情が違うかもしれません。

むやみにあらゆる情報を吸収しても駄目ですし、逆に自分の興味のある分野だけの情報を吸収しても駄目なんだと思います。

本書を読めばわかりますが、立花さんは破産したり、乞食や自殺一歩手前の所まで何度か追い込まれています。それだけの経験をした方が書いているということを知っておく必要があります。つまり、ここに書かれている内容を実践したからと言って、皆が立花さんのようにプロの投資家として成功するわけでもないという事です。

最後の望みを小豆にかけてある小さな仲買店に行き、そこでおじいさんに出会ってからお話が急展開していきます。しかしその後も欲をかいて失敗したりするわけですから、投資がいかに難しいかがわかります。最終的には右足を切断する事故に遭い、会社も辞めざるを得なくなります。

ここで個人的に気になったのが、同じ会社で働く同僚たちの冷たい態度です。著者はその会社で次長にまで昇進していましたから、周りの嫉妬も相当あったと思いますが、一方でそのような重責の人が投資にうつつを抜かして本職をほったらかしにしていたのですから、見下されても仕方ない面もあったような気がします。

決して身体に障害があるから馬鹿にされたり、冷たくされたのではないと思いたいです。もし立花さんの言うように、数十年前の日本で身体障碍者に対する差別がひどく、職業に貴賤を設けていたとしたら、私は過去の日本人を高く評価し過ぎていたかもしれません。

欲や不安が人をいかに狂わすかは、私も投資をやっていたのでよくわかります。頭でやってはいけないとわかっている愚かな行為も、知らず知らずの内に行ってしまうものです。

投資をしなければ現在のお金や経済に対する考え方がそもそも生まれなかったので、非常に良い勉強だったと思います。欲や不安に振り回される恐ろしさを知るだけでも、充分投資を学ぶ価値はあると思います。

第二部:売買の定石

ここからは物語と並行して投資に関する具体的なお話が多くなってきます。投資をやっている方であれば引き続き興味を持って読めるでしょう。

一応言っておくと、立花さんも林さんも板垣さんも相場のプロで技術者ですから、技術を身に付けることが一番大事だと主張することは当然のことです。一方で理論を軽視する描写が散見されますが、よろずは現在百姓かつ総合家を目指しているわけですから、多少納得できない内容を含んでいることも付け加えておきます。

例えば、本書では次のような記述があります。
「音楽評論家は芸術論で事足りるでしょうが、演奏家はまず演奏できなければなりません。演奏技術がまったく未熟なのに、高慢な芸術論を蝶々と述べ立てるのは、まさに漫画そのものといえるでしょう。」

「われわれ(相場師)は、音楽でいえば演奏家を目指しているわけです。もちろん、演奏家が本質論を追及したり芸術を論じるのは自由です。また、それが演奏の表現力を高めることになるのかもしれません。しかし、それは楽器の演奏が出来てからのことでしょう。演奏技術が水準以下どころか、技術のイロハすら知らずに芸術論に走り、「花散るか、風散らすか、ここに微妙な要諦がある」などというのは、まさにナンセンスであると私は思うのです」

確かにおっしゃる通りと思うこともあるのですが、私のような人間の場合、音楽の芸術論を学んだり技術の習得をする前に、そもそも「音とは何か?」「音楽とは何か?」という思考から始まると思います。ドレミファソラシドの音階は人間が便宜的に創ったものです。人が理解しやすいように一定の境界を作り定義づけられていますから、音楽の表現方法にも当然限界が生まれます。

もし私が本当に音楽に興味があるなら、それらの制限を自分なりに理解した上で音楽を勉強しようとするはずです。音楽の素人だからこそ、余計な先入観を持たずに「音楽とは何か」を追求できます。もちろん音楽の技術を習得しながらでも、本質を追求し続けるでしょう。つまり本質と技術は私の中で常にバランスと調和を保っていなければならないということです。

他に技術偏重で学ぶことに疑問を感じる理由は、多大な時間を費やして技術だけを習得した後に、その技術そのものを否定できる人は少ないと思うからです。自分の人生の大半をかけて学んだ後に、その知識や技能に自ら疑問を持ったり、後に否定できる人はどれだけいるでしょうか。

第三部:売買技法の上達

ここからは建て玉の流れを実際に見ながら、さらに相場技術の具体的な話に進んでいきます。内容も多少わかりにくくなってきますが、技術と相場感覚を習得するためには大事な部分です。グラフと場帖の書き方もここで初めて説明があります。

相場師としての鉄則や心得も書かれていますが、すべてが重要なことだと思います。私はこれらを紙に書いて机の前に張って投資を行っていました。

第四部:建て玉の操作

この章では、添付されている立花さんの場帖(取引記録)が一番参考になりました。プロの行う取引を単なる理論の説明ではなく、実践を場帖で見られますから貴重だと思います。

ちなみに、「相場のチャートから見えてくる人の感情の流れとお金に関する考察」で紹介している私の場帖の写真を見れば、本章で説明している場帖と形式が似ていることに気づくと思います。ただし玉帖に関しては、基本は本書を参考にしていますがかなり自分なりのアレンジを加えてあります。

まとめ:

プロの投資家を目指す方であれば、本書を文句なくお勧めします。レビューの中で否定的なことも書きましたが、それは現在の私がプロの投資家を目指していないからです。

6つ星評価なのは、私にプロの相場技師を本気で目指すきっかけを与えてくれたということと、仮にプロの投資家を目指さなくても、投資以外の多くのことを本書から学ぶことが出来たからです。

何回か読み返しながら投資の勉強と実践を並行して行えば、知識や技術が自然と身に付いてくると思います。立花さんはこの投資だけで30年も生き残ってこられたのですからすごいことです。

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