鎖に繋がれた犬と自由な犬 前編 「世にも奇妙な物語」より

「鎖に繋がれた犬と自由な犬」

連休中に昔保存していた動画を見ていたんですが、その中で「世にも奇妙な物語」は考えさせられることがいくつかありましたので、忘れないうちに書いておきます。本当は元の動画を見ていただいた方が、内容も理解しやすいと思うんですけど、随分昔の番組なのであらすじも書きます。

タイトル:「13番目の客」
世にも奇妙な物語より

冒頭

タモリ:
「鎖に繋がれた犬は、自由はありません。決まった時間に餌をもらえる楽しみ、散歩に出るときの喜びがあります。一方、繋がれていない犬は、一日中食事も散歩も自由です。どちらが幸せなのでしょうか。」

話の概要

草彅剛 世にも奇妙な物語SMAPの草彅剛演じる企業の経営者、本田謙一郎(主人公)が不思議な秩序の元で運営されている理髪店に自分も巻き込まれるお話です。彼は、非情で計算高く損得で動くタイプの人間です。取引相手に対しても、人間味は一切持たず徹底的に安く買い叩きます。安売り競争の中で生き残っていくために、企業の経営者としては優秀なんでしょう。

理髪店看板 世にも奇妙な物語ある時、主人公の謙一郎は政治家の結婚式に出席するために車で移動している最中、身なりを整えるため理髪店に寄っていこうと思いました。その時、草原の中にポツンと建っているお店を見つけて、門をくぐって足を踏み入れたところ、奇妙な13人の集団がいたのです。

謙一郎は自分の散髪注文よりも、秩序や自分たちの美意識を優先させる彼らに最初戸惑い、段々と不安と怒りを覚えつつも、無事散髪が終わりさっさと出ていこうとしました。しかし、門をくぐり抜けようとしても出ていけなかったのです。

代わりに、散髪を行った主人が何故か他のスタッフ達に見送られながら門から出ていきました。スタッフに話を詳しく聞くと、新しい客が1人入ってくるごとに、散髪スタッフの1人が出ていくことができるとのことです。つまり、謙一郎はこの不可思議な価値観や秩序に支配された閉鎖空間に閉じ込められてしまいました。

新たな13人目の仲間となった謙一郎は、集団の中にも序列があり、規模が小さいながらも社会ルールが細かく決められていることを彼らの説明から知ります。彼は、13番目の客の髪を自分で切らないと、この理髪店から解放されない。そしてそれが、この理髪店の「秩序」だという。

混乱して暴れる謙一郎謙一郎は混乱と恐怖の中で、残りの12人のスタッフ達のおかしさを社会常識に照らし合わせて非難しました。しかし、彼らの返答は謙一郎がおかしいというのです。理髪店にいるスタッフ達にとっては、理髪店の中こそが社会であり、そこでの常識や秩序が全てです。謙一郎が大切だと思っている事(ビジネスや政治家の結婚式への出席等)や当たり前だと思っていること(お金を払えば自分の望んだサービスを受けられるという常識等)は、その理髪店の中では通用しません。

食事を与えられない謙一郎にパンを分ける相談をする最初抵抗しましたが、縄で縛られ、食事も行動の自由も全く与えられなくなった謙一郎は、秩序に逆らうと生きていけないと悟り、彼らのルールの元で生きていくことを受け入れます。

一応言っておくと、謙一郎以外の12人のスタッフも同じ境遇で理髪店に閉じ込められた人たちです。謙一郎の苦しみは十分知っていますし、罰として食事が全く与えられない彼を憐れんで皆でパンを少しづつ分け与えます。こういう助け合いの精神を見ると、他の12人のスタッフも必ずしも悪人ではないことがわかります。自由がなくても組織という秩序の元で生きることの安心を感じさせる瞬間です。

一旦現実を受け入れると、謙一郎は急速に集団に馴染んでいきます。そして、彼は徐々に序列が上がっていくと共に、昔のぎらついた心はなくなり、穏やかになりました。

5段階のプロセスある夜、先輩から誰でも新しい生活や文化に接した場合に経験する5つの段階の説明を受けました。第1段階は、好奇心があるため、見るもの聞くもの何でも楽しいということです。第2段階になると、不満が起きます。謙一郎や他のスタッフの場合、理髪店に来て新しい生活を強制されるところから始まるため、第1段階をスキップして第2段階からスタートします。第3段階は、後から来た者への知ったかぶりをして、第4段階に初めてその文化を理解し、自分のものにするということです。ただし、最後の第5段階に関しては、理髪店を出て初めて経験することができるので、説明した先輩自身もどんなことが起きるのか、知りませんでした。

突然押し付けられた秩序に不平を言う新たな客その後、昔の謙一郎を彷彿とさせるような客が来ました。その人は会社の社長で商売のことばかり考えています。彼に対して、謙一郎は穏やかな顔で次のような言葉を返しました。

「金を増やすことに何の意味がある?」
「眠らずに働いて何の意味がある?」
「それで幸せなのか?」
「目を赤くして、いつもいらいらして、気が付けば家庭を失って、食べ物の味も失って、魂の輝きを失って、それでも生きていくのか?」
「もう、やめよう。そこに何の利益もない。何も。」

颯爽とお店を出ていく謙一郎新しい客が入ってくるごとに次々とお店を出ていく同僚を謙一郎は見送り、一年後、遂に彼自身が訪れる新客の髪を散髪して、そのお店から出ていくことができる権利を得ます。先輩たちが行ってきたことと全く同じことを彼は新たに来た客に対して行い、後輩スタッフからの拍手の中で悠々と満足して門をくぐって出ていきました。

道路を歩いていると、いきなり電話が鳴ります。自分の昔の部下からの電話です。話を聞いてみると、理髪店で一年間暮らしたはずなのに、外の世界では時が全く進んでいないことを知ります。

自分の部下の言っていることが理解できない謙一郎謙一郎は取引先相手を際限なく値切って喜んでいる自分の部下を理解できなくなっていました。その時、以前先輩が言っていたことを思い出します。理髪店を出た後にはもう一つの段階、つまり第5段階があるということを。

謙一郎は突然理髪店の方向に走り出します。しかし、戻ってみるとあったはずの理髪店はありません。草原が広がっているだけです。彼は不安と恐怖と混乱の中で、理髪店にもう一度入れてくれと懇願し続けます。草原の傍らには、以前謙一郎の先輩が理髪店から出ていくときに使ったはずの自転車が転がっていました。

不安と恐怖で混乱する謙一郎

おわり

考察は次のページから行います。