第1回 苗つくりに挑戦-準備から種まきまで 2014年度版

今年からは苗つくりにも挑戦すると以前お知らせしましたので、ここではその経過を書いていきます。苗として現在育てているのは、トマト・ナス・ピーマン・キュウリ・カボチャの5つです。

その中で、キュウリだけはカボチャを台木にして接ぎ木してみたいと考えています。他は全て自根植えです。当初はトマトやナスも接ぎ木で育ててみようと思ったんですが、ちゃんと準備をしてから順化作業を行わないと、失敗すると感じましたのでやめました。

順化とは、苗の穂木と台木に傷をつけて接ぎ木した後で、苗の負担を軽減するために日光・温度・水分などを調整しながら、次第に傷を癒合しつつ環境に慣れさせる作業を言います。人間で例えると、怪我をしたらしばらく横になって、カロリー制限をしながら安静にするのと同じ事です。

なぜ苗を作るのか?

苗づくりは今回が初めてなので、まずはなぜ苗を作ろうと思ったのか、その理由を書きたいと思います。

1.費用が安い

まず一番大きな理由として、苗をその都度購入していると、畑が広くなるほど費用がかかるからです。自分で種を購入し苗を育てた方が、はるかに安上がりだと感じました。ただし、コスト削減を実感できるのは、50坪以上の畑を持っておられる方だと思います。私の場合畑の大きさが50坪にも満たないので、種々の農業資材や種の購入費を考慮すると正直微妙な所です。今回はあくまで、苗つくりの勉強と割り切って行います。

2.接ぎ木することができる

次に苗をつくると、後で接ぎ木することができる、という理由もあります。接ぎ木の利点は、例えば病気を防いだり、株を丈夫にして収量を増やすなどのねらいがあります。しかし接ぎ木をすると、切り口が癒合するまで太陽光線を弱めたり、空気中の湿度を高めるなど、こまめな調整が必要になりますので、実際私が行うのは簡易なキュウリの接ぎ木のみです。

トマトとナスは同じ種類の違う品種に接ぎますが、キュウリはカボチャを台木にして接ぎます。また、ピーマン、カボチャなどは接ぎ木しません。

3.自根苗で寝かせ植えができる

多分、普通の人は「寝かせ植え」が何なのかよくわからないと思いますが、詳しくは次回以降の記事で紹介したいと思います。寝かせ植えをする理由は3つあり、一つ目は腰の据わった転びにくい苗にすることで、二つ目は根の量が増えること、そして三つめは作業性が良くなることです。トマト、ナス、ピーマン、カボチャがその対象となります。畑に直接種を撒いてしまっては、この寝かせ植えはできません。

準備するもの

作業前に準備するものは以下の通りです。これら以外にも、小さなスコップ、シート、ハス口の付いたジョウロなど、農作業で一般的に使われる道具や資材も必要に応じて準備します。ここで紹介されている他にも使用する道具はありますが、それらは追々書いていこうと思います。

1.育苗箱

育苗箱

まずは育苗箱です。これに種を撒いて幼苗になるまで育てます。ポットに鉢上げなどせずに、種を撒いたらそのまま畑に定植できるようになるまで大きく育てたいのであれば、最初からセルトレイやポットに種を撒く方法もあります。しかし、自根苗をポットに「寝かせ植え」したい場合には、育苗箱から育てた方が後々の作業がやりやすいでしょう。

2.セルトレイ

セルトレイ

写真に載っているのは25穴です。定植させるまでセルトレイで育てるつもりであれば、最低でもこれ位のサイズが必要になると思います。私の場合、セルで育ててから後でポットに鉢上げすることに決めましたので、穴のサイズはもう一回り小さくても良かったようです。もちろん容量が小さい程、土が乾燥するのも早いので、水やりは気を付けて行う必要があります。

3.ポット

10.5cm ポット

最初に購入したのは9cmサイズのポットでしたが、25穴のセルトレイから鉢上げするには容量が小さすぎる感じがしたので、後から新たに10.5cmサイズのポットを購入し直しました。汎用的に使用できるという点では、この位のサイズが丁度良いと思います。

3.培土

ポット培土

私はポット用の土が不揃いな培土を購入しましたけれど、他に種まき用のきめの細かい均一な培土も売っています。育苗箱やセルトレイで発芽させる際は、種まき用の均一な培土の方が適していると感じました。というのも、発芽の時期が揃いやすいので、管理が楽になるからです。ポットで育苗する際は、逆に粒が不揃いのポット用培土を使用した方が良い苗ができます。

もちろん、種まき培土でもポット培土でも、どちらを使用しても発芽も育苗もできます。商品説明にはその年に使い切るように書いてありますし、種まき用とポット用で別々に培土を購入してしまうと、個人用途としては分量が多すぎますので、一つだけ購入してそれをセルやポットに共用して利用する方が、コストも節約できて良いと思います。

4.液肥

万田 アミノアルファ 液肥

土の容量が少なく、肥料が不足気味になりやすいセルやポットでの苗つくりには、液肥を混ぜた水やりが不可欠です。液肥として、去年から世話になっている「万田 アミノアルファ」を今年も使用します。枯れかけていたナスの苗が復活したり、野菜の草勢も良かったので、効果はあると思います。しかし、栽培する作物によって肥効は異なるようで、液肥をしても期待した効果が得られなかった野菜もいくつかありました。

5.病害虫防除

無農薬 病害虫予防スプレー

今年も可能な限り無農薬で育てるため、上記の病害虫予防スプレーを購入しました。特に葉っぱものは、対策をしないとほとんど虫に食べられてしまいますし、この商品が病害虫に効果のある事を期待しています。

6.板

普通の何の変哲もない板切れです。土をならしたり、種まき用の溝を付ける際に使用します。記事の後半で、培土をならす写真の右横に写っているのがそうです。

参考書籍

苗つくりのための参考書籍

次に、苗つくりをする際に参考にした書籍を紹介します。基本的には、上記の3冊から苗の育て方を学びました。最初は『果菜の苗つくり』を購入して、本に書いてある通り実践しようとしたんですが、どうもうまくいかなかったり、ハードルが高いと感じたので、さらに2冊を追加購入し、より簡易で確実な栽培方法を比較検討しました。この2冊に関しては、苗つくりに限らず農作業全般をカバーしていますので、初心者にも読みやすいと思います。いずれも良書です。本記事でもある程度のやり方は説明しますが、細かい手順やコツに関しては、それぞれの書籍を参考にしてください。

1.果菜の苗つくり-失敗しないコツと各種接ぎ木法

苗つくりに限って言えば、本書に書かれている内容が一番ためになります。しかし、基本的にプロ向けに書かれた本なので、家庭菜園として野菜や作物を育てている一般人には難易度が高いです。金銭的・時間的・実力的に自分でできる程度を見極めて、割り切って実践する必要があります。

お勧め度:★★★★★

2.有機・無農薬でできる野菜づくり大事典

タイトルや表紙に書いてある通り、無農薬な有機農法で、206種類の野菜を作る方法が載っています。個人的には最後の『有機菜園の基礎知識』という章が、土づくり・肥料・栽培プラン・種まき・育苗など、全体の農作業がわかりやすく簡潔に書かれていたので良い勉強になりました。特に植える前日に種を水に漬けておく方法は、発芽時期を揃えるためにも非常に重要な作業だと思います。何から始めたらわからない初心者にもお勧めできる内容です。

ただし、206種類もの野菜の栽培方法を一冊でカバーしているため、基本的な野菜に関する栽培方法の説明が、次で紹介する『野菜の上手な育て方大事典』と比較して若干軽めに感じました。

お勧め度:★★★★★

3.野菜の上手な育て方大事典

この本は、化学肥料を使った慣行農法による、106種類の野菜栽培について解説しています。有機農法に興味のある方であれば、本書は必要ないと思われるかもしれませんが、実はわかりやすさという点で見れば、一つ前に紹介した『有機・無農薬でできる野菜づくり大事典』よりこちらの方が上だと思います。何故かと言うと、どちらも271ページとページ数は同じなのに、紹介されている野菜の数が異なるからです。したがって、沢山の品種が掲載されている書籍よりも、106種類の野菜しか掲載されていない本書の方が、詳しく丁寧に説明されているのでお勧めです。

しかし、こちらは農作業全体についてページ数があまり割かれていないので、説明が不十分な所は別書で補うのが良いでしょう。さらにキュウリの接ぎ木方法も掲載されており、『果菜の苗つくり』にも一応作業プロセスは細かく記載されていますが、モノクロ写真なので一部の作業工程にわかりづらい箇所があります。本書と合わせて読んでみると、接ぎ木作業の全体像がより明確になると思います。

この本の構成で、有機農法による栽培手順が載っている書籍が一番欲しいです。たくさんの野菜が紹介されているよりも、数を絞って一つ一つを詳細に説明してくれる方が、個人的には助かります。

お勧め度:★★★★★

4月29日(種を撒いてから0日目)-セルトレイと育苗箱に種まき

それでは、実際の種まき作業に入りたいと思います。

1.培土を入れる

培土をセルトレイに入れる

まずは、セルトレイに培土を入れます。一通りまんべんなく土を入れたら、次にトレイ全体を地面に軽く叩いて土を締めます。少し上部にスペースができると思いますので、空いた分の土を補充します。育苗箱も同じように地面に軽く叩いて土を締めますが、土の量は箱の高さの8割程度までにしておきます。

2.培土を板でならす

板でならす

土が盛り上がった部分を、板でならして水平にします。育苗箱も表面の土が平らになるようにならしますが、あまり力を入れて土を固くさせてはいけません。適度に土がフワフワの状態で種を撒くのがコツです。

3.種を植える

私はトマト・ナス・キュウリの種をセルトレイに植え、ピーマン・カボチャの種は育苗箱に植えました。トレイと育苗箱に分けた理由は、単にいろいろ試してみたかったからです。

セルトレイに植える際は、指で少し窪みを付けてからにします。育苗箱に関しては、カボチャの種は板で溝を作ってそれに沿って植え、ピーマンはばら撒きで植えました。どちらの方法でも、種を撒いたら板で軽く種が土に半分埋まるくらい押し付けます。その後で、土を上からパラパラとかけて種が1cmの厚さで隠れるくらい覆土します。種植えが完了した写真は、ページのトップ(一番上)に載せてあります。最後は、ジョウロのハス口を上にして優しくたっぷり水やりします。

より専門的な方法に関しては、説明書や本を参照してください。

お店で購入したキュウリの接ぎ木苗

キュウリの接木

植えた種が発芽して、苗として成長するまでにはまだ時間があるので、適期に収穫できるよう、トマト・ナス・ピーマン・キュウリ・カボチャの苗を少しづつ購入しました。上の写真にあるのは、キュウリの接ぎ木苗です。台木としてカボチャの苗が使用されています。さすがに専門職の人が接いだだけあって、台木(カボチャ)と穂木(キュウリ)の繋ぎ目が綺麗です。これは割り接ぎという方法だと思われます。

まとめ

苗つくりの準備から種まきまでをここで説明しました。私にとっては初めての経験なので、今後失敗も出てくると思いますが、それも含めて勉強だと思い、割り切って実行します。あくまでも、今年の目標は苗をうまく育てることではなく、学ぶ事にあります。

次回は、種が発芽してからの苗の成長を書きたいと思います。

つづく